あくせいこうねつしょう

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悪性高熱症

Maliganant hyperthermia

死亡率の高い麻酔合併症である。主として吸入麻酔薬による全身麻酔中に,40℃以上の高熱,筋の硬直,頻脈を発現し,二次的に高度アシドーシス,ミオグロビン尿などの症状を呈し徐脈,不整脈などにより死に至る。日本での発生報告件数は年間10例前後で,1960年代の死亡率は約80%であったが,ここ数年間は11%に減少している。

悪性高熱症は,骨格筋の筋小胞体からのカルシウム遊離機構の異常に起因すると考えられている。患者ではこのカルシウム遊離速度が遺伝的に亢進していることが認められる。さらにカフェインやハロセンをはじめとする揮発性吸入麻酔薬は,遊離機構の促進作用がある。吸入麻酔薬の使用により,骨格筋細胞内のカルシウム濃度が上昇して筋収縮を起こし,それに伴う過剰熱発生が高熱を引き起こすと考えられている。

本症を予測する確実な方法はない。本人または家族に高熱の既往,麻酔死亡,スポーツ死がある場合や血液化学検査でCPK(クレアチンホスホキナーゼ),LDH(乳酸脱水素酵素)が高値の時は疑う。

【治療】吸入麻酔薬および筋弛緩剤の投与を中止し,強力な全身冷却を行う。100%酸素で過換気を行う。頻脈,不整脈に対してはプロカインアミドを投与する。筋硬直にはダントリウムを静注する。

【薬剤】ダントリウム:末梢性筋弛緩薬。筋小胞体からのカルシウム遊離を抑制する。本症の特異的治療薬である。初回1mg/kg静注,症状改善が認められない場合1mg/kgずつ追加投与(総量7mg/kgまで)。投与開始後は肝機能検査を定期的に行う。

主要疾患・治療と薬剤ハンドブック(薬事新報社刊)より